愛と音の花束を
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ホールリハをした水曜日から3日後の土曜日。
我々は合宿に来ていた。
うちの市民オケには、夏合宿がある。
市の端っこにある山の合宿所で土日にかけて泊まり込み、普段なかなかできないパート練習やセクション練習をし、もちろん全体合奏もする。夜は飲み会。
部活か!というノリである。
とはいえ、ほとんどが社会人なので、部分参加の人も当然出てくる。
私も土曜だけ出席して、夜に帰る。日曜は仕事。
ただいま、夕方、個人練習時間。
だけど、我々パートリーダーは会議室に集まり、次回定演曲の最終決定会議を行っている。
三神君がソリストを引き受ける際に出した交換条件が、三神君とコンミスをやる私の次回定演曲投票権を5倍増しにする、というものだった。
三神君がメインに推したのは、ベートーヴェンの交響曲第5番、通称『運命』。
有名曲なのでやりたい人と、逆にアラが目立つということでやりたがらない人と、両極端に分かれたけれど、そこは三神君のひとり5票が功を奏した。
前プロ(最初のプログラム)は、ワーグナー作曲『ニュルンベルクのマイスタージンガー 第1幕への前奏曲』。
これまたやりたい人と、大学の入学式や卒業式で何度もやったことがあるから別の曲がいい、という人に分かれたけれど、ここでも私のひとり5票が効いて決定した。
セカンドヴァイオリンが弾き甲斐ある曲だし、色んな楽器との絡み合いが楽しいし、勉強になるから、私が弾きたいのはもちろん、椎名に弾かせてあげたいと思ったのだ。友人として、パートリーダーとして、これくらいの感情は許されるだろうか。
中プロ(真ん中のプログラム)は、ストラヴィンスキー作曲『バレエ組曲 火の鳥(1919年版)』。
アマチュアからしたら難曲の部類に入るけど、前プロ・メインのバランスから問題なし、と判断された。