愛と音の花束を

終了後、三神君と一緒にヴァイオリンパートの部屋に入ると、何やら盛り上がっている。

「次、これやりましょう!」
と稲森君がウキウキと楽譜を開く。

「おー、面白そう」
と椎名。

合宿恒例のヴァイオリンデュオ大会か。
ひとりで長時間同じ曲ばかりさらってると飽きてくるから、仲のいい人とデュオを弾いて遊びたくなる、という現象。

「あー、これも弾いたことないな」

「いくら初見が得意な椎名さんでもこれは手強いですよ!」

初見(しょけん)とは、文字通り、初めて見る楽譜を演奏すること。

「おし、やってやろうじゃん」

ということで始まったのは、ヘンデルのパッサカリア。

稲森君がファースト、椎名がセカンドだ。

……上手になったなぁ。
弾き方も音もダイナミックなのに、雑にならない。
すっかりヴァイオリニストの雰囲気だ。
小さな頃からやっているけど癖のある弾き方をする稲森君より、椎名の方が上手く見える。
やっぱり設楽先生はすごい。
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