愛と音の花束を
……そうして私はひとり、トボトボ帰っているというわけだ。


建物から離れた暗い駐車場で立ち止まる。
灯りが遠くで点っているだけ。
標高は低いものの、山なので、星空がきれいに見える。
しかも今日は雲がないので、満天の星空。

……宝石を散りばめたみたい。

ありきたりな比喩だけど、こんな星空を見ると、いつもそう思う。

あまりに美しく、心が震える。

私に空を見上げることを教えてくれたのは、前の彼だ。

以前このオケにいた、星が好きな人。

並んで地面に寝転び、手を繋ぎ、星空を見上げたことを懐かしく思い出す。
彼との初めてのキスも、付き合うことになったのも、星空の下だった。

幸せで、少しだけ切ない記憶。

今、彼はアメリカにいる。
どうしているだろう。

幸せかな。


…………愛、か。

空を見上げる習慣。
コンマスやパートリーダーをしていた彼をお手本にすること。
彼と過ごした日々が、私を支える大切なものであることは確か。
ということは、あれは愛だったんだろうか。
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