愛と音の花束を

店に戻ると、事務所で朝のうちに作っておいたおにぎりと卵焼きをパパッと食べて、売場に出た。

お客様がちょうど途切れたところだった。
白い花を何本か集め、ざっとまとめる。
カーネーション、アルストロメリア、デンファレ、カラー、かすみ草……なるべく日持ちのする花を選んだ。
花と本数をメモし、レジ裏のコルクボードに貼り付ける。後で処理しよう。

「あらー、店長、時間大丈夫なの?」

ベテランパートの長谷川さんが声をかけてくれた。

「すみません、そろそろ出ます。夕方には戻れると思いますので、それまでお願いします」

「はーい。こっちは気にせず行ってらっしゃい! 頑張ってね‼︎ 三神君によろしくね! この間も超カッコ良かった! シェヘラザードもすっごく楽しみにしてるからって!」

はいはい。

なお、長谷川さんはコンマスの知り合いでも何でもない。
私が出るからと演奏会に来てくれて、コンマスのファンになった。

恐るべし、三神圭太郎。


本日、土曜日午後は弦楽器のトップがコンマスの家に集まって、打ち合わせと軽い練習をすることになっている。

私は長谷川さんと、店のブログを更新している父、外の鉢花の手入れをしている母に声をかけ、店を出た。





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