愛と音の花束を
「よく夜空見上げてるけど、星が好きなの?」

彼は話題を変えた。

私は視線を夜空に戻して、答える。

「なんとなく……あるから、眺めてる」

「そっか。綺麗だとは思うけど、全然星座とかわからないなー」

「それもアリだと思う。私も有名なのしか知らない。夏の大三角くらい」

「それさえもわかんない」

「うそ。小学生の時、理科で習ったでしょ」

「はは。そんな気もするけど」

他愛もない会話。
それでも、嬉しい。
大事にしたいと思う。

胸が痛くても、近くにいたい。

その時、ストンとさっきの三神君の言葉が落ちてきた。

……愛する覚悟って、こういうことなのか。

つらくても、その人を近くで見ていたい。
その人に頼ってもらえるような人間になりたい。
いつも笑って過ごせるように、困っていれば助けたいし、落ち込んでいれば励ましたい。

愛情は恋人だけのものではない。
男女間の友情の要素でもあるはずだ。

遠くに行ってしまった前の彼と違って、椎名は今ここにいる。

後悔しないように、胸の痛みから逃げずに、よき友人になりたい。
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