愛と音の花束を
□
肩に残る彼の手の感触が、抜けない。
それは、切なさと罪悪感を同時にもたらしていた。
でも、そんな感情から逃げないと決めたんだ。
悪いのは、過剰に反応した私。
向こうは絶対気にしてるはずだ。
だから、私から声をかけようと決めていた。
今日は合宿後初めてのオケの練習日。
水曜日、いつもの公民館。
駐車場で、車から降りて歩き出す椎名の後を追う。
実は早めに来て車の中で待っていたのだけど。
「おはよう」
彼は振り向いて、驚いた顔で「おはよ」と言った。
よかった。顔に跡や傷はついてないらしい。
私は隣に並ぶ。
「この間はごめん。痛かったよね」
「……あっと……うん。仕方ない。こっちこそ悪かった。反省してる」
申し訳なさそうに謝る声に胸がツキンと痛んで、慌てて明るい声を出す。
「そういえば、初見がすごく上手でびっくりした」
「あ、うん、ありがと。……先生に鍛えられたから」
さすがは設楽先生。
「私はすごく苦手だから尊敬する」
笑いながら言うと、
「オケでは必要ないでしょ? 平気だよ。それに言わなきゃ誰もわかんないし」
彼も少し笑いながら返してくれた。
……馬鹿みたいだけど、泣きそうになった。
痛みに耐えれば、小さな幸せと嬉しさが手に入るんだ。
肩に残る彼の手の感触が、抜けない。
それは、切なさと罪悪感を同時にもたらしていた。
でも、そんな感情から逃げないと決めたんだ。
悪いのは、過剰に反応した私。
向こうは絶対気にしてるはずだ。
だから、私から声をかけようと決めていた。
今日は合宿後初めてのオケの練習日。
水曜日、いつもの公民館。
駐車場で、車から降りて歩き出す椎名の後を追う。
実は早めに来て車の中で待っていたのだけど。
「おはよう」
彼は振り向いて、驚いた顔で「おはよ」と言った。
よかった。顔に跡や傷はついてないらしい。
私は隣に並ぶ。
「この間はごめん。痛かったよね」
「……あっと……うん。仕方ない。こっちこそ悪かった。反省してる」
申し訳なさそうに謝る声に胸がツキンと痛んで、慌てて明るい声を出す。
「そういえば、初見がすごく上手でびっくりした」
「あ、うん、ありがと。……先生に鍛えられたから」
さすがは設楽先生。
「私はすごく苦手だから尊敬する」
笑いながら言うと、
「オケでは必要ないでしょ? 平気だよ。それに言わなきゃ誰もわかんないし」
彼も少し笑いながら返してくれた。
……馬鹿みたいだけど、泣きそうになった。
痛みに耐えれば、小さな幸せと嬉しさが手に入るんだ。