愛と音の花束を
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次の定期演奏会の乗り番を決めて。
今回の定期演奏会の花束注文を受け付けて。
いつも通りの演奏会前の仕事をこなすうち、あっという間に本番の日がやってきた。
ゲネプロ(当日の最終リハーサル)前、ホワイエで音出しをしていると、スーツを着た環奈が姿を見せた。
今日も受付チーフをしてくれる彼女は、本番が聴けない。ゲネプロを聴くために早く来たんだろう。
環奈とは、久々に顔を合わせる。
……あ、怒ってる。
それはそうか。
再三にわたる誘いを、忙しいからまた今度、と断り続けていたから。
椎名のことをどう説明したらいいか分からなかったし、心配かけたくなかった。
環奈は不機嫌な表情のまま、私の方にツカツカと歩いてきた。
怒られるか嫌味を言われるか。
「ごきげんよう」
腕を組んでその挨拶は、怖い。
「……おはよう」
「楽器置いて」
うわ、何だろう。まさか殴られることはないとは思うけど……。
私はおとなしくヴァイオリンと弓をケースに戻した。
環奈は厳しい視線で、私をいろんな角度から見上げてくる。
そして。