愛と音の花束を

3


次の定期演奏会の乗り番を決めて。

今回の定期演奏会の花束注文を受け付けて。

いつも通りの演奏会前の仕事をこなすうち、あっという間に本番の日がやってきた。


ゲネプロ(当日の最終リハーサル)前、ホワイエで音出しをしていると、スーツを着た環奈が姿を見せた。
今日も受付チーフをしてくれる彼女は、本番が聴けない。ゲネプロを聴くために早く来たんだろう。

環奈とは、久々に顔を合わせる。

……あ、怒ってる。

それはそうか。
再三にわたる誘いを、忙しいからまた今度、と断り続けていたから。
椎名のことをどう説明したらいいか分からなかったし、心配かけたくなかった。

環奈は不機嫌な表情のまま、私の方にツカツカと歩いてきた。
怒られるか嫌味を言われるか。

「ごきげんよう」

腕を組んでその挨拶は、怖い。

「……おはよう」

「楽器置いて」

うわ、何だろう。まさか殴られることはないとは思うけど……。
私はおとなしくヴァイオリンと弓をケースに戻した。

環奈は厳しい視線で、私をいろんな角度から見上げてくる。

そして。
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