愛と音の花束を
…………抱きついてきた。


ふわっと甘い香りが鼻をくすぐる。
温かくて、柔らかい、女の子の身体。
背中に回された手が、背骨や肩甲骨をなぞった。

ええと。
周りの視線が気になるんですが。
こら、そこの女子達、顔を赤くしない!

「もう……この骨……肉のなさ……」

環奈はつぶやいてから顔を上げ、

「これ以上痩せてどうすんのよ!」

と怒った。

「……そんなに、変わらないけど」

「いや、絶対痩せた。もう、こんなことなら無理矢理食事に連れて行ってカロリー高いもの食べさせておくんだった!」

「……胃もたれするので遠慮します」

私は言いながら、彼女の身体をやんわりと引き剥がした。

「どうしてそうやっていつもひとりで我慢するのよ。私じゃ頼りない⁉︎」

「……我慢してるつもりは、ないんだけど」

環奈は何か言いたそうに頬を膨らませた。
その前に、こちらから言葉を重ねる。

「いざとなったら頼るよ」

彼女は私をジロリと睨んだ。

「……約束だからね」

「はい」

「とりあえずこの定演終わったら、ごはん行く時間作って」

「はい」

「よし」

うなづくと、一転、優しい目で私を見つめた。

「話したくないことは話さなくていいから。打ち上げ。美味しいもの食べながらコンミスの苦労について語り合おう」

……環奈らしい気遣いに感謝する。

しばらく会わなくても関係が壊れることなどない、この貴重な女友達を大切にしようと思った。



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