愛と音の花束を
ファゴットの音が残る中、そのまま、第2楽章へ。
(この曲は3楽章通して演奏される。)


一転して、穏やかで、優しい第2楽章。

オケの伴奏の上で、ソロヴァイオリンがゆったりと、伸びやかに歌っていく。
ハ長調という安定して明るい調で、甘く、幸せな世界が広がる。
ただし、オケの伴奏が、時折暗い影を落とす。

あ……、椎名みたいだ、と思った。

明るくて、優しいけど、たまに、影が見える。


中間部に入ると、曲調は、暗く、重くなる。

嵐のような情熱がうねる。

『好きなのに、うまくいかないときの切なさ』
『愛は幸せなことだけではない』

三神君の言葉が蘇る。

まだ心はきしむけれど、前みたいに、怖くない。
……乗り越えられる気がするから。



やがて、雲が切れて太陽が顔を出すかのように曲が明るくなり、最初の主題が戻ってくる。

試練を乗り越えて、力強く愛を奏でるソロヴァイオリン。

ふたつめのフレーズは、第1部より1オクターブ高くなる。

美しく、気高く響く高音は、我々に彼の覚悟や決意を知らしめる。

同時に、傷ついても立ち直る人間の強さを示し、聴く者を励ましてくれる。


ジンとして、

胸の中にものすごい感動が広がった。


……私も、強くなりたい。


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