愛と音の花束を
間を置かず、第3楽章へ。

先ほどの第2楽章中間部の主題を基にした序奏の後、管楽器がファンファーレのように鳴らされ、曲は一気に活気を帯びる。

ここからは、ソロもオケも最後まで走り続ける。

華やかなソロヴァイオリンが容赦なく疾走していくなか、木管が涙ぐましい努力をして食らいつき、楽しくピチカートをしていた弦楽器もそのうち複雑になるリズムに反射神経を駆使して立ち向かうことになる。

でも、楽しい!
すごく楽しい!

三神君は『生きる喜び』と表現したけれど、本当にそう!

今までの苦労なんて、吹き飛ぶくらいの高揚感!
早瀬先生の要求をどう実現させるか練習の度に頭をフル回転させたこととか、管楽器と弦楽器のぶつかりを調整して胃が痛い思いをしたこととか、弾けてない弦楽器メンバーをどうするか悩んだこととか、もう、どうでもいいや!






3楽章はあっという間にコーダになだれ込んだ。

ソロが情熱的にトレモロを刻む。
終盤でテンションマックス、対して身体は疲れているはずなのに、決して荒くならずに、ひらすら美しい。
どんな体力と精神力してるんだ、この人は!



もう譜面の残りがわずか。

コンバスが、半音ずつ上がる二分音符5つで期待感をこれでもかとあおった後で、
ソロヴァイオリンがハイEを高らかに響かせる!
ああ、たまらない、ここ!



あと3小節。
ソロの急激な上昇音が突き抜けて響く。そのテクニックに驚嘆!

あと2小節。
和音は三神君のザッツに合わせる。そのかっこよさといったら!
ああ、もう、君はとんでもなくいい男だよ、三神君!

そして、最後の1小節、全音符フェルマータ!

アタックはしっかり、その後は弓の配分に気をつけて、音をどこで切るかは三神君と早瀬先生を注視!

三神君は早瀬先生と目を合わせ、弓を跳ね上げ、フィニッシュ!
同時に我々も音を切った。





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