愛と音の花束を


響きが消えて、一瞬の空白の後。


‼︎‼︎
ものすごい拍手‼︎
同時に「ブラヴォッ!」「ブラボー!」の声!

その音量に驚いたのはもちろん、

さっき飛んできた声が……

いや、気のせいだ。彼のはずがない。
慌てて意識からさっきの声を締め出す。
私にはまだ仕事が残っている。
ここから、オケがどう振る舞うかはコンミスである私が合図しなくてはならない。


三神君が客席に向かって深々とお辞儀をすると、拍手のボリュームが上がる。
今までで一番すごい大きさと熱量の拍手!
万雷の拍手、というのはこういうことなんだ、と思った。

三神君は早瀬先生とガッチリ握手をした後、私に向かって握手を求めてきた。
汗が光る晴れやかな笑顔と、潤んだ瞳。

私は立ち上がり、彼のとんでもない手を握り返す。
オケを代表してこのとんでもないソリストと握手できるなんて光栄だ。コンミスやってよかった。

彼は私の手を離すと、オケのみんなに向かって、ありがとう、とお辞儀をした。みんなからも三神君に向けて拍手と足踏みが送られる。

早瀬先生は、オケみんな起立するよう促す。

オケメンバーが起立し、客席を向くと、また拍手のボリュームが上がった。
うわあ。気持ちいい。素直に嬉しい。

「ブラヴォッ!」

……また、幻聴。心の中で苦笑する。

「ブラボー!」

あ、この声、椎名?

彼も、乗せてあげたかったな。コンチェルトの楽しさ、味わわせてあげたかった。この拍手、受けさせてあげたかった。
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