愛と音の花束を


シューベルト作曲 交響曲第8(9)番 ハ長調 D944『ザ・グレート』。

対話が繰り返されながら曲が展開していく。

その対話は、
メロディとメロディだったり。
楽器と楽器だったりする。

そう、楽器。パート。

『オーケストラの弦楽器はパートの人数が多いから、気楽でしょ?』と思われることがあるけど、トップからすれば、『人数が多いからこそ、ひとつのパートにまとめるのに苦労する』と返したい。
8〜12人で音を揃えるのはもちろん、意識の集約も必要。
『私ひとりくらい弾けなくても……』『俺ひとりくらい間違っても……』の意識と、『しっかり貢献したい!』の意識とでは、出てくる音が違う。

その点、椎名が入ってから、ぐっと楽になった。

彼の『貢献したい!』の気持ちは、しっかりパートの音を支えてくれるし、周りの人たちにも好影響を与えてくれた。

私がメンコンでコンミスをやりきれたのも、グレートにそれほど手がかからなかったということが大きい。


さて、そのグレート、
対話は短かったり、長かったり。
その裏では同じ音型が延々続いていたり。
でもそれは息の長ーいクレッシェンドに含まれていたり。
音符はそれほど難しくないのに、弾いていて、頭を使う曲。
しかもメロディは単純で美しいだけに、演奏の仕方によってはすごくダサく聞こえるため、演奏者のセンスが問われる。

早瀬先生は、それらを緻密に組み立てていく。
まだ30歳手前だというのに、恐れ入る。

そして、シューベルトも、この曲を30歳手前で書いた。
私はもう、その歳を追い越してしまったんだな。
この曲に触れると、ちゃんと生きなきゃ、と思わされる。


椎名が宣言した通り、セカンドヴァイオリンの後ろもよく頑張ってくれている。
それはファーストヴァイオリンも同じだった。三神君があれだけのソロを弾いた後にコンマスやってるのだ。気合いも入るし、三神君の負担を少しでも軽くしたいと思うのはみんな同じ意識なんだろう。トップとしてはありがたく、嬉しい。

弾くときには余計な力を入れすぎず、休符ではしっかり呼吸。
うん。大丈夫。いける。

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