愛と音の花束を
そんなことを思いながら出来上がった花束を花瓶に活けた。

「さすがプロですね。僕が活けるのと全然違う」

彼が花瓶の花をいろんな角度から見ながら言う。

完璧人間の姿を崩してみたくて、たまに軽く意地悪をしたくなる。

「それは、まあ、学校にも通いましたし、10年以上仕事をしてきて、これで生活してますから。私がコンマスのようには楽器を弾けないのと同じです」

……さあ、どうだ?

が。
彼は私に向かって微笑みを浮かべながら、淀みなく返してきた。

「オケの経験でいえば、永野さんの方が断然上ですよ。パートとしての曲の仕上げ方や経験が浅い人へのフォロー、他のパートとのコミュニケーションの取り方など、勉強させてもらうことがたくさんあります」

今回も、あえなく失敗。

……それにしても、お世辞とわかっていても嬉しいことを言ってくれるんだから、ほんとにこの人はおそろしい。



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