愛と音の花束を

「メンコン、ソリストも素晴らしかったけど、オケがよく寄り添ってて、いい演奏だった」

目頭が、熱くなる。

……泣いちゃだめだ。

「よく引き受けたね。大変だったろ? 頑張ったのがすごく伝わってきた。成長したなぁって、うれしかった」

涙がこぼれそうになり、慌てて抱き締めた花束に視線を落とす。

「あぁ、ごめん。泣き虫なのは相変わらずかな?」

頭も身体もひどく疲れていて、
感情をコントロールできない状況で、
昔とはいえ大好きだった人に、
私だけに向けられる優しさを感じたら、
泣くなという方が無理だと思う。

だけど、かろうじて残っている理性で、
泣いちゃいけないと言い聞かせ、
うつむき、歯を食いしばり、
懸命にこらえていると。

ふと、

身体に彼の体温を感じた。

そっと身体に腕が回され、
背中を優しくトントンと叩かれる。

欧米人がよくやる、ハグだ。

わかってはいるのに。

人肌の温もりは、
私の心の柔らかい部分を直撃して。

涙がポロっとこぼれ落ちた。
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