愛と音の花束を
じわじわ感動しながら、花を組み合わせていると。

「間宮さん、戻ってくるんですね」

思いがけない言葉に、手元が狂いそうになった。

三神君は暁と一度だけ一緒に定演を弾いている。
暁と私が付き合ってたことも知ってるだろう。

私はそっと深呼吸してから、言葉を選ぶ。

「そのようですね。毎回練習には参加できないかもしれないけれど、それでもよければ戻りたい、と言っていました」

「間宮さんが戻りたいというのなら、僕は受け入れます。永野さんはいかがですか?」

「……どの程度弾ける状態なのかはわかりませんが……。ただ、彼が戻りたいと言うのなら、人前で弾いても恥ずかしくない程度には弾けるか、あるいは弾けるようにしてくるでしょうね。来年の記念演奏会で編成の大きな曲をやることを考えたら、人数は1人でも多く確保したいので、今から戻ってもらうのがよいと思います」

「結構客観視なさるんですね」

「……どういう意味ですか?」

「元彼というと、もっと感情的になるのかと思いまして。……定演終了後のように」

見られてたのか。

……彼女さんには悪いけれど、つくづくかわいくない男だ。

「……あの時は、疲れていたので……。元彼といっても、だいぶ昔の話です」

それ以上突っ込むな、とのメッセージを込めて言うと、伝わったらしい。

「そうですか。失礼なことを言いました。すみません」

察しがいいから助かる。

三神君は外で鉢植えを眺める彼女のもとへ向かっていった。

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