愛と音の花束を
仏花を作り終え、外で仲良く話す2人を眺める。

彼女は、あの情熱的なメンコンをどのように聴いたのだろう。

彼と付き合うのは大変な部分もあるだろうけど、何卒、宜しくお願いしたい。

そんな気持ちをこめて、彼女にプレゼントする小さな花束を作ることにした。
好みが分からないから、いろんなタイプと色を組み合わせよう。スタイリッシュなものが似合いそうだけど、結構ロマンティックなものも好きそう。あ、ほら。三神君に向かって笑う姿は、雰囲気が変わってキュートだ。


出来上がった花束をラッピングし、リボンを結ぶ。よし。完成。

私は外で仲良く話す2人に「お待たせしました」と声をかけた。



会計が終わった後、

「これは、彼女さんへ。私からの気持ちです」

と、さっき作った小さな花束を渡す。

「かわいい! いいんですか?」

ふむ、これは彼女にとって“かわいい”なんだな。覚えておこう。
ともあれ、素直に喜んでくれてほっとする。

さぁ、ここからが本番。花束にこめた気持ちなんて真っ直ぐ伝わらない。言葉にしないと。

「オケを代表して、コンマスのこと、よろしくお願いします」

彼女は私の真剣な表情に戸惑ったのか、三神君を見やる。

三神君は、苦笑した。




幸せそうな2人を見送った後、あの2人、付き合ってから何ヵ月?と指を折って数えてしまった。

数ヶ月で結婚を決める人は決める。
三神君や椎名のように。
数年付き合ってもしない人はしない。
暁と私のように。

比べるのは無意味だ。
わかってはいる。
結婚はタイミングだ。

ふーっと大きく息を吐き、気持ちを切り替え、仕事に戻ることにした。








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