愛と音の花束を
「よろしく」
私の右隣の席で、暁が微笑む。
「……よろしく」
「まさか復帰早々ファーストのトップサイドで弾かされるとは思ってなかったなぁ」
「久々に間宮さんと弾いてみたかったんです」
コンマス席の三神君がしれっと言ってのける。
今日はマイスタージンガー前奏曲。
三神君は、隣に暁を指名した。
三神君の隣が暁ということは、その隣がセカンドヴァイオリントップの私。なお、その隣、セカンドのトップサイドには望月さんに座ってもらった。何気に細かい音符が多いセカンド、彼女の几帳面さが欲しかった。
さて、後ろは座ったかな、と振り返ると。
……椎名が2プルトの表に座っていた(私の斜め後ろ)。
自由席とはいえ、思い切って前に来たな。いいことではある。今回から椎名は全乗りだ。3曲ともセカンド。なお、これは私だけではなく、三神君の判断でもある。
みんなが揃ったところで、開始前に暁の自己紹介があった。
「間宮です。以前にこのオケにお世話になってましたが、また戻ってくることができてうれしく思います。よろしくお願いします」
当たり障りのない、だけど好感を抱かせる挨拶に、温かい拍手が沸き起こった。