愛と音の花束を
『ニュルンベルクのマイスタージンガー』は、ワーグナーが作ったオペラ。ニュルンベルクはドイツの地名。マイスタージンガーは『親方歌手』と訳される。
ストーリーをざっくり言うと、親方が青年騎士を助けて歌合戦に勝たせ、騎士の想い人とくっつけるというもの。
前奏曲は、10分程度。劇中での登場人物や状況を表す動機(モチーフ)がたくさん出てくる。オペラのハイライトを味わえる、明るくて楽しい曲だ。
「この曲やったことある人?」
指揮の羽生さんの問いに、3分の2くらいが挙手した。
アマオケの定番曲。このオケでも今まで何度か取り上げていたので、私はファーストもセカンドも弾いたことがある。
もちろん暁も手を挙げた。
「では経験者も多いので最初に通してみましょう」
羽生さんがそう言い、三神君を見る。
彼もうなづいた。
冒頭。
暁から、ブレスの音が聞こえて、
ああ、暁が戻ってきたんだ、と実感した。
彼は、スッ、とわかりやすく息を吸ってくれるのだ。
周りはとても弾きやすい。
明るく、力強い旋律を奏でる暁が視界に入る。
……やっぱり上手い。
ボウイングがすごくきれいなのは変わらない。
しかもちゃんと三神君の弾き方に合わせている。ここの八分音符の弾き方は指揮者やオケにより異なる。ベタ弾きなのか、抜くのか、軽く弾くのかなど。こっちも後で統一しないと。