愛と音の花束を
そしてセカンドヴァイオリン最大の見せ場かつ難所がやってくる。

ヴィオラと一緒に16分音符スタッカートで『行進のモチーフ』を奏でるのだ。

他の楽器が気持ちよく愛のモチーフを歌っていたり、シンプルな八分音符でマイスタージンガーのモチーフを奏でている中、細かい音符をタカタカ弾く。これを大変と思うかおいしいと思うかはそれぞれだろうけど、私は大好き!
3つのモチーフが重なり合うハーモニーの素晴らしさといったら!
ワーグナー天才!

引き続きヴィオラと一緒に16分音符スタッカートで『嘲笑のモチーフ』。(ここでは騎士を妨害するライバルへの、一般市民の嘲笑。もはやみんなでワーッとヒーローを応援するような雰囲気。)
全体に対し『少しずつクレッシェンド』の指示が書かれているけれど、一番盛り上げ効果を出せるのは我々16分音符チームだ。
おいしい!

これ以降はラストまでずっとフォルテ、またはフォルティッシモ。
しかも弾きがいのある箇所が続く。
理屈抜きで楽しい!

まさに“大団円”の雰囲気の中、ジャンっと力強く曲が閉じられた。


なかなかいいんじゃない?の雰囲気が漂う中、後ろから「を〜、たまらん」という椎名の呟きが聞こえてきた。

思わず振り返ると、目が合った。

どちらからともなく、お互い、ニコっと笑う。

『楽しかったよね!』

そんな気持ちが通じた。

……嬉しい。

そういえば定演以来個人的な話をしたのは、プレゼントしてくれたマウスケアセットのお礼だけだった。それ以外はほとんど話していなかったけれど、そんなブランクを飛び越えて、笑い合えた。
よかった。すごくほっとした。

サイドに座ってくれた望月さんとも、笑顔を交わす。
彼女の堅実さにどれだけ救われたことか。本番でもサイドに座ってもらおうかな。

周りを見渡せば、そこかしこで笑い合う姿が見られる。

ああ、この雰囲気、好きだな。
幸せ。




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