愛と音の花束を
「楽器の腕はどうだった? 下手になってたら見に行きたい」

「変わらずに上手だったよ。3曲ともファースト弾くことになった」

「何だ、つまんなーい。地味に見せかけて器用だし要領いいしプライド高いもんね」

「……相変らず厳しいね」

私は苦笑いする。
私達が付き合ってる頃から、環奈は暁に対して辛辣だった。

「頭よすぎてソツのない男は好みじゃない。男は不器用なくらいでいいのよ」

たぶん、暁と環奈は頭の回転の速さとか要領のよさとか似たところがあるから、こんなに反発するんだと思う。
言うと怒られるだろうから黙ってるけど。

「まあ私は結花が幸せならば誰でもいいんだけどさ。とはいえどうせならこの先私も仲良くしていける人がいいなと思うわけよ。ま、本当私のことなんかどうでもいいんだけどね。間宮さんとまた付き合うならそれはそれでいいし。でもね、元カノが好きなカラーの花束差し出すキザさとか、アメリカ帰りをいいことにさりげなく元カノ抱き締めちゃうとことか、どうもねー、いや、私の好みはどうでもいいんだけど」

「環奈、酔ってるでしょ。そろそろ帰ろう」

「椎名君がよかった」

ほら、酔ったふりして核心ついてくるソツのなさ。

「…………」

「どうして駄目になったの?」

「…………ノーコメント。帰ろ。今日はありがとう。楽しかった」

「…………結花ってば、私じゃなかったら友達なくすよ」

環奈がじっとりとした目つきで私を睨む。

「その言葉そっくり返す」

負けじと睨み返し。

「…………」
「…………」

…………長い沈黙の後、どちらからともなく笑ってしまった。

「変わり者同士だから付き合えてるんだわね、これ」

「そんなの昔から分かってた」

「あーやっぱ結花、好きだわ」

「それはどうも」

「だから幸せを祈ってます」

「ありがと」




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