愛と音の花束を
今後の練習の優先順位を確認すべく、一度全部通してやってみることになった。

『序奏』。
低弦とバスドラムがピアニッシモで不気味な雰囲気を醸し出す。
一気にファンタジーの世界に引き込まなくてはならない。
けれども、ここ、フラット7つ! ドレミファソラシ……って全部じゃないの!とツッコみ、譜読みの最初からくじけそうになる。正直、セカンドの出番が少なくてよかったと思う。
転調し臨時記号がなくなり、弦楽器グリッサンドからの、セカンド&ヴィオラで冒頭のおどろおどろしいフレーズ。で、弾き終わったと油断して拍を数えるのを忘れると、次入れないよ、後ろ!

続いて『火の鳥の踊り』、『火の鳥の踊りのバリエーション』。(ほとんどの場合、各曲が切れ目なく演奏される。)
8分の6拍子。弦楽器がリズムを細かく刻んで踊りのステップを、木管が細かい音符でひらひらっと火の鳥が戯れる様を表現している。だけど今はそんな余裕はなく、自分の音符を正確に鳴らすことで精一杯の人がほとんど。
そう。ほとんど。
なのに、隣の椎名のこのノリは何だ。ちゃんと踊りのニュアンスが出てる。
複雑なリズムを完璧に把握して弾いてるのが伝わってくる。
休符はしっかり休む。合わせるところはブレス。
息を合わせて、という言葉があるけど、それは音楽でも一緒。椎名の呼吸感は、隣にいてとても弾きやすい。

続いて、『王女たちのロンド』。
フルートの穏やかなフレーズの後、三神君のソロヴァイオリンがつなぎのフレーズを奏でる。
たった2小節、4音。
それなのにこの美しさと印象深さ。うっとりしてため息が出る。
優雅なオーボエソロの後、チェロのソロ。
真木君が、やたら色っぽく弾く。
まあ、ここは王子と王女が出会って恋に落ちる場面でもあるから、構わないんだろうけど……。
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