愛と音の花束を
ヴァイオリンパートを集めて、選曲委員会の議事録を配布する。
終わると、三神君がみんなの前に立った。
「先ほど団長からもありましたが、ブラコンもマーラーも難曲です。しかもそれぞれ違った性質の難しさです。できるだけ早くから曲を聴いたり、スコアを読むなど、各自対策を始めてほしいと思います。そのため、乗り番も早めに決めます。もし仕事や学校や家庭の都合など、特殊な事情がある人は、できるだけ早く永野さんに申告してください」
こういった取りまとめも私の仕事。
「分かっている人はこの後すぐにでもどうぞ」
と付け加える。
個人の技量を踏まえた曲の割り振り、ファースト・セカンドのバランス、考える時間は少しでも多い方がいい。
解散後。
帰り支度を終えた私のところへ、椎名が真面目な顔でやってきた。
「はい、結花ちゃん、申告しに来ました」
心臓がドクリ、と跳ねた。
もしかして。
とうとう、来るのか。
椎名は声をひそめて言う。
「あの、申し訳ないのだけど、個人的都合なので、できれば他の人には……」
ああ、間違いない。
結婚するから乗れないとかそういう話だろう。
「分かりました。場所を変えましょう」