愛と音の花束を
椎名の反応といったら!

大きな瞳を見開き、固まっている。

「夏に、結婚式場に彼女と来てるの、見たから。私が仕事でお取引させてもらってるレストラン。他の人には言ってないよ。おめでとう。よかったね。お幸せに」

ずっと考え続けてた台詞だから、スルスルと言葉が出た。

胸のつかえがとれたように、スッキリした。

これで、本当に前を向ける気がする。
長かったなぁ。
もうじき冬も終わるよ。
私ってばほんとに意気地なし。

「あーーーっ!!!」

いきなり椎名が叫んだ。

びっくりするな。何?

「そういうことだったのか!!」


…………は?



そして。
ガシっと、私の手を掴んで来た。

ドキっとする。

何するの、と言おうとして、顔を見ると。

いつになく、真剣で情熱的な眼差し。

……この距離感と、雰囲気は、知ってる。

まさか。
でも。
だって。


「俺は彼女はいないし、結婚の予定など全くありません」



…………え?



「場所、変えよう」

椎名は私の手を掴んだまま、立ち上がった。




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