愛と音の花束を
「……好きになっちゃいけないと思ってた人を好きになっていいと分かって、……ほっとし……」

言い終わらないうちに、横からぎゅうっと抱き締められていた。

椎名の胸の中は、
想像していたとおり、
温かくて、
幸せすぎる場所だった。

耳が椎名の胸に当たって、
鼓動が聞こえる。
ものすごく速いスピードで、ドクドク鳴ってる。

「ずっと誤解させててごめん」

……勝手に誤解してたのはこっちなのに、謝ってくれるんだ。

やっぱり優しい気遣いができる男だなぁ。

「もう、思う存分、好きになっていいから」

椎名の口は頭の上にあるのに、
その声は身体を通じて響いてきて、
たまらない幸福感をもたらす。

……触れたい。

私は、身体の前にある、椎名の腕に触れる。

たくましくて、温かい。

その感触に、好き、の気持ちが膨らんで。

身体を少しずらし、大きな背中に手を伸ばす。

特別な立場の人だけに許される近さ。
ハグとは違う、お互いの好きの気持ちが溢れる抱擁。

今までずっと気持ちを押し込めて蓋をしてきたから、解放された気持ちは、私の中を駆け巡って、理性を突き崩す。

もっとくっつきたくて、腕に力をこめる。
< 281 / 340 >

この作品をシェア

pagetop