愛と音の花束を
4
本日、快晴。
寒さもゆるんだ2月土曜昼下がり。
ホールの玄関前から始まる行列の数番目で、環奈と2人、アンサンブルコンサートの開場を待つ。
入場無料に加え、三神圭太郎が弾くヴァイオリンソナタと『動物の謝肉祭』という目玉がポスターやSNSで宣伝されているということで結構な客入りが予想されている。全席自由のため、いい席を確保すべく、環奈と2人で早めに来て並んでいるというわけ。
なお、団員から注文された花束は、環奈と、環奈の旦那様に手伝ってもらって納品済み。
那智は大丈夫かな。緊張してないかな。
あの後、唇を離した那智は、はにかんで言った。
「幸せすぎてこわいから、今日はここまででいい?」
と。
私も同じ気持ちだった。
それにしても、ごつい男がかわいく見えるのだから恋はおそろしい。
「明日も会いたいけど、ごめん、アンコンに向けた最終練習しなきゃならないから……」
「ん、わかった。練習と本番頑張って」
「……結花ってば、ものわかりよすぎ」
「ストイックな人は嫌いじゃない」
那智は面白そうに笑った。
その笑顔を見られただけで、胸がぎゅうっとなるんだから、恋は一種の病気だと思う。
「土曜日、アンコン終わった後、一緒に過ごそう。たくさん話がしたい」
その約束で水曜夜から今日までウキウキしてしまうんだから、まったく、私が私とは思えない。