愛と音の花束を

「あー、結花がひとりでニヤニヤしてるー」

環奈が下から私の顔を見上げてきた。

「なんか怪しい。今日だってうちの旦那と一緒に迎えに行くっていう誘いを素直に受けたし、全身から上機嫌オーラが、」

「おかげさまで」

「おかげさまで、って……! まさか、とうとう椎名君と⁉︎」

私は照れくさくて、視線を前に戻した。

「三日前に」

環奈が口を押さえたまましばらく固まっているのが視界の端に映る。

いくら何でも長すぎでしょ、と見ると。

わ。うそっ。

「ちょっと、泣くことないじゃない……!」

環奈がウルウルしているのだ。

「だって……」

環奈は私に抱きついてきた。

「お幸せに」

「どうなるかわからないけど」

私の反応に、環奈は身体を離し、怪訝な顔をした。

「は?」

「私に隠してることがあるんだって」

「……わぉ」

その時ちょうど、開場時間となった。

受付でプログラムが配られる、けど。

本多さんが列に並ぶ私達につつっと寄ってきてささやいた。

「結花ちゃんに環奈ちゃん、ごめんね、見込みよりも客数多くなりそうでプログラムが足りなくなるかもしれないから、余ったら渡すのでもいいかな?」

身内だから異存はない。
噂でだいたいの曲目と出演者は把握している。


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