愛と音の花束を
ピアノのみの間奏に入り、音楽は濃さと熱さを増した。
那智から、キラキラした透明感のあるオーラが立ちのぼってるように見える。
以前那智が私のザッツを、『青い炎がブワっと出た感じ』と表現したことがあったけど、今の彼の姿を見て、こういうことなのかもしれない、と思う。

大きな手が、鍵盤の上を舞い踊る。優雅さを失わないのに、出てくる音は芯があって力強い。

那智は曲のテンションを上げ、聴衆の期待感を煽る。
この後入る三神君への挑発だ。

その三神君は不敵な笑みを浮かべ、一瞬のタメの後、期待通りにハリのある高音を響かせた。

もう一度、ピアノのみ。
さっきのを上回る情熱をこめた音楽に、身体がゾクゾクっとなる。

三神君も気品を保ったテンションの高さで応酬する。

すごい。すごい、この2人!


音楽は落ち着き、最初のテーマが戻ってくる。

苦難を乗り越えた後の、穏やかで幸福に満ちた世界。

そして再びエネルギーが高まっていく。

うわぁ。
この絡み合い!
生きる喜びが炸裂する感じ!
もう、たまらない!


ラスト、ヴァイオリンがトリルを奏で、ピアノが華麗に舞い踊る。
ヴァイオリンが先に頂点に達した後で、ピアノが低音から高音へ一気に駆け上がる。

最後のヴァイオリンとピアノの和音は、2人の音楽家のエネルギーが弾け、火花が散ったかのようだった。




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