愛と音の花束を
「ブラヴォーっ!」

三神君が跳ね上げた弓と、那智が跳ね上げた腕が降ろされる前に、ブラボーが飛んだ。

誰かが叫ぶと、あ、いいんだ、と次々とブラボーの声。

最初の小曲からブラボーって、と苦笑するものの、気持ちはわかる。

それほど凄かった。


那智はほっとしたように上を向いて目を閉じた。ふーっと息を吐いたようにも見える。

緊張してたんだろう。
全く感じさせなかったけど。


那智はそれから立ち上がり、三神君と微笑みながら握手をした。

……あぁ、もう、やられた。

那智は『引かれるかも』と心配してたけど、惚れ直すくらいにかっこよかったよ。演奏もピアノを弾く姿も。

揃ってお辞儀をする2人に、手が痛くなるくらいの拍手を送る。

2人が袖に下がっても拍手は鳴り止まず、一曲目からカーテンコール。

三神君は当然のような顔して拍手を受けてるけど、那智は感激と照れが混じって初々しい。

……うん、かわいい。
ぎゅうっとしたいくらいにかわいい。
あー、もう、私としたことが何これ。

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