愛と音の花束を
オーケストラの楽器の最大派閥は言うまでもなくヴァイオリンである。
アマチュアオーケストラ、基本的にヴァイオリン経験者は大歓迎。
うちのオケでは、オーディションといっても、落とすことはほぼない。
どの程度弾ける人なのか見極め、ファースト・セカンドどちらに振り分けるかを決め、どれ位アフターフォローすべきか参考にする。
今回の入団希望者、楽器経験2年というのが引っかかる。
学生ならまだしも、社会人で2年か……。
小部屋では、入団希望者の男性が窓に向かってヴァイオリンを構え、音出しをしていた。
夜なので、窓は鏡代わりになるのだ。
開放弦での全弓を使ったロングトーン。(つまりは弦を押さえずに、弓の端から端までを使って長い音を出す)
……へぇ。意外。
思ったよりサマになってる。
音も力強い。
ちゃんと楽器を鳴らしてる。
きちんと先生に教えてもらって、2年間真面目に練習してきたんだろう。
真面目なのは、非常にポイント高い。
楽器で曲を弾けるようになるには、地道に練習するしかないから。
そういえば、最初声をかけられた時も、かなり熱心だった。