愛と音の花束を

キッチンで、彼へ贈られた花束を次々と花瓶に活けていると、部屋着に着替えてきた那智が姿を見せた。

「ありがと。手伝う」

「もう終わるから平気。ありがと」

「まだ残ってるじゃん。って、何、このお化けみたいな花……」

那智は袋に残っている、一輪のかなり大きな花を取り出し、怪訝な顔をしてつぶやいた。

「って、結花から⁉︎」

そう。私が贈った花。

「キングプロテア」

「……はぁ。何だか大層な名前だね。初めて見たけど、インパクトあるな……」

とにかく、大きい。人の顔くらいはある。

中心部にはたくさんの白っぽい小花が集まり、それを赤い花びらのように見える苞(ほう)が包みこんで、全体でひとつの花のように見えるのだ。

太陽のようなイメージが、那智と重なるのと……。

「さすが結花。こういう茶目っ気のあるセンス、好き」

茶目っ気……って、まあいいか。
いやらしい話、一輪で数千円するんだけど、もちろんそれは言わない。

那智は、つつっと近づいてきて、
「ありがと」
という言葉とともに、唇の端にチュっと音を立ててキスをしてきた。

私が微笑みながら受け入れると、じゃれるような軽いキスが繰り返される。

……予想はしてたけど、この男は、ちゃんと“好き”を態度であらわしてくれる。

溺れるなという方が無理。







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