愛と音の花束を
那智はたくましい身体をしているから、覚悟はしていた。
その、激しいんじゃないかなって。
だけど。
すごく優しく、繊細で、丁寧だった。
例えるならば、ドルチェ&エスプレッシーヴォ。
こういう行為は今まで、気持ち良いだけじゃなくて、たまに痛みや辛さも伴うものだった。
好きな人とするなら、それもまるごと受け入れられたし、そうすることが愛してるって証だと思ってた。
こんな風に、ひたすら優しく快楽だけを与え続けられるなんて初めてで……。
私はうっとりする頭の片隅で、専門学校の経営学の授業できいた、茹でガエルの話を思い出していた。
熱湯に入れられたカエルは熱くて飛び跳ね脱出できるけれど、冷水に入れられたカエルが徐々に温度を上げられていくと、熱くなっていることに気づかずに、そのまま死んでしまう、という例え話。
今の私は、ぬるま湯にたゆたうカエルだ。
気持ちいいけど、このまま熱くなっていったら……。
すると、那智が耳元でささやいた。
「いきたい? いきたくない?」
と。
……耳を疑った。
こんなこときかれたの、初めてだ。
だって男って、問答無用でそうさせたいと思ってるんじゃないの?
どう答えるか一瞬迷ったけれど、
この男なら丸ごと受け入れてくれるという安心感がすでに私の中に確立されていたので、
「……まだいきたくない。那智と一緒がいい」
と耳元にささやき返した。
私は一度達してしまうと、もうだめなのだ。
その後は相手が満足するまで待つ。
でも、そういうものだと思ってたし、今までそれで充分幸せだった。
「了解。じゃあ、『待って』と『もっと』は正直に言うように」
予想を上回る気遣い。
この歳になって、“こんなの初めて”という、ウブな乙女みたいな台詞が頭をよぎるとは思っていなかった。
その、激しいんじゃないかなって。
だけど。
すごく優しく、繊細で、丁寧だった。
例えるならば、ドルチェ&エスプレッシーヴォ。
こういう行為は今まで、気持ち良いだけじゃなくて、たまに痛みや辛さも伴うものだった。
好きな人とするなら、それもまるごと受け入れられたし、そうすることが愛してるって証だと思ってた。
こんな風に、ひたすら優しく快楽だけを与え続けられるなんて初めてで……。
私はうっとりする頭の片隅で、専門学校の経営学の授業できいた、茹でガエルの話を思い出していた。
熱湯に入れられたカエルは熱くて飛び跳ね脱出できるけれど、冷水に入れられたカエルが徐々に温度を上げられていくと、熱くなっていることに気づかずに、そのまま死んでしまう、という例え話。
今の私は、ぬるま湯にたゆたうカエルだ。
気持ちいいけど、このまま熱くなっていったら……。
すると、那智が耳元でささやいた。
「いきたい? いきたくない?」
と。
……耳を疑った。
こんなこときかれたの、初めてだ。
だって男って、問答無用でそうさせたいと思ってるんじゃないの?
どう答えるか一瞬迷ったけれど、
この男なら丸ごと受け入れてくれるという安心感がすでに私の中に確立されていたので、
「……まだいきたくない。那智と一緒がいい」
と耳元にささやき返した。
私は一度達してしまうと、もうだめなのだ。
その後は相手が満足するまで待つ。
でも、そういうものだと思ってたし、今までそれで充分幸せだった。
「了解。じゃあ、『待って』と『もっと』は正直に言うように」
予想を上回る気遣い。
この歳になって、“こんなの初めて”という、ウブな乙女みたいな台詞が頭をよぎるとは思っていなかった。