愛と音の花束を
–––––––ピアノ名曲集のCDが数枚。


あなたたち……!

久々に奥歯を噛み締めた。

「環奈さん監修で選びましたので、間違いないです!」

環奈め……いつの間に……。

「……ありがとう……」

女子チームがキャッキャ言いながら去っていくなか、望月さんが残った。

「あの、永野さん。大変余計なお世話なんですが」

赤い顔をして、もじもじしながら言うので、
「なに?」
とできるだけ優しい声で促す。

望月さんは、意を決したように、言った。

「彼氏がソリストやるのって、ものすごい拷問ですから!」

そうか。
望月さんは、この間の『動物の謝肉祭』で『白鳥』を弾いたチェロの真木君と付き合ってる。
望月さんも乗ってた。
ステージ上で彼氏のソロ聴くのは心臓に悪かったんだろうな。

「じゃあ望月さんがセカンドトップやってくれる?」

ちょうどやってきた三神君が後ろから言った。

「あああああたしがですか⁈」

「ヴァイオリンも、チェロみたいに曲ごとにトップ代えても面白いと思ってたところ。今後は永野さんの負担を軽くしてさしあげたいし」

……どういう意味で言ってる?
三神君は相変わらず腹に何か隠してる笑顔。
まあ、いいけど。





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