愛と音の花束を
愛と音の花束を

俺の彼女は、愛されることに慣れている。

外見はクールビューティ。
見かけに違わず、外でいちゃつこうとすると、思いっきり冷たくされる。

だけど、家で2人きりの時は、かなりガードが甘くなる。というよりほとんどない。
キスやスキンシップをしても、すんなり受け入れる。
気持ちよさそうに微笑みながら。
それが気持ちいいことだと知っているのだ。

そんな風に触れさせてもらえるとは、意外だった。

いや。
いいんだ。
冷たくされるよりずっといい。

ただ。
そうさせた男がいるということに、
ごくたまに、
ものすごく嫉妬する。


例えば、オーボエの本多氏。
俺が結花と付き合って以来、「結花ちゃん、かわいいでしょ?」「泣かせたら承知しないからね」などと、上から目線で言ってくる。
結花が若い頃彼と付き合ってたことは、噂できいたことがあった。


例えば、アメリカ帰りの間宮氏。
秋の定演後に、奴の胸で泣く結花を見た時には、かなり落ち込んだ。
結花が長い間彼氏を作らないのは、アメリカに出向してる彼の帰りを待ってるから、という噂は本当だったんだ、と。
そんな奴も、俺と結花が付き合い始めてから、
「結花のこと、泣かせてもいいよ。その時はもう一度僕の胸で泣かせてあげられるからね」
などとこれまた上から言ってきた。
プライドが高い、ひねくれた男である。


だけど彼女がそんな風に元彼たちから愛される訳がわかる。

クールに見えるのは冷たいわけではなくリアクションが薄いだけで、人にはちゃんと優しいし、義理堅い。
抱いていると、たまに抱かれてる気になる。母性とはこういうことかと思った。

これ以上はただののろけなのでこの辺にしておくけれど、付き合ってから何度惚れ直したことか。


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