愛と音の花束を
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「というわけで、サブメインアンケート一位は、三神圭太郎ソロによるヴァイオリン協奏曲となりました。民主主義の原則によりこれに決定……」
「しません。本人が承諾しておりません」
「何だよ、毎回毎回このパターンじゃん。いい加減団員の期待に応えていただきたいね」
……ただいま、市民オケの選曲会議中。
団員経営の飲食店を貸し切り、各楽器のパートリーダーが集まり、定期演奏会の曲目を話し合っている。
団員アンケートや、先日の演奏会でお客様に書いていただいたアンケートの項目『今後お聴きになりたい曲』に基づき、技術委員会がふるいにかけ、この運営会議にかける。
団員アンケート一位は、ここ数回、三神君ソロでのヴァイオリン協奏曲。
お客様からのアンケートにも必ずあがってくる。
彼が地元の大学オケの卒業記念演奏会でチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を弾いたのが、我が市民オケの団員やこの地域のアマオケファンに知れ渡っているということもあるけれど、決定的なきっかけは、数年前の定期演奏会。