愛と音の花束を


アマオケのアマオケっぽいところ、それは、弦楽器の音程のぬるさ。
そして、ピアニッシモの貧弱さ。

逆に言えば、それを克服すれば、ある程度の演奏に聴こえるということ。

オルガン付第二楽章第1部ラスト付近。
ファースト・セカンド・ヴィオラの3パートだけで絡み合うピアノ〜ピアニッシモ〜メゾフォルテの40小節は、この曲におけるセカンド最重要課題のひとつであるとパートのみんなに最初に伝達してあった。

……って、この重要なとこで思いっきり違う弦引っかけたの誰だ⁉︎

思わず弾きながら後ろを振り返ってしまった。

オケの弦楽器奏者、普通トチっても顔に出さない。
隣の人を見て、何やってんの、と自分のミスをカモフラージュするツワモノさえいる。

そんなことを知らず、やばいっ、という顔をしている人がひとり。

そう。
椎名だ。




「椎名さん」

「すみませんごめんなさいすみません」

練習後真っ先に奴のところへ行き、声をかけるや否や、平謝りされた。
大きな体を小さくして、シュンとしている。

……その様子を見たら、怒る気も失せた。

チャラく、“悪い悪い”とか言われたらカチンときていただろうけど。
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