愛と音の花束を
言われてすぐ直せるようなら、楽器練習に苦労はない。
自分でトライ&エラーを繰り返すことでしか、弾けるようにならない。

公民館の退出時間もあるので、特に厄介な箇所を中心に弾いてもらい、アドバイスをし、今日のところは終了。

「年末年始によくさらって、年明けの本番指揮者の合奏までにはもっと音程とリズムを正確にとれるようにしておいてください」

『さらう』とは『譜面を繰り返し練習する』こと。

「はい!」「ふぁい」


はぁ、どっと疲れた。
聴覚と視覚を使い、音と弾き方を観察し、分析し、どこが悪いのか、どこから直すか、直してもらうにはどう伝えるか……、脳みそフル回転させてたから、頭がじんじんする。
早く帰りたい。

私が2人の元を離れて自分の楽器を手早く片付けていると、コンマスがやってきた。

「お疲れさまでした」

「いえ」
疲れたところはみんなには見せられない。この人にも。

「お疲れのところ申し訳ないんですが、この後少しお時間いただけませんか」

コンマスの依頼は断れない。それに少しだろうし。これまでも練習後に反省会をすることはよくあった。

「構いませんよ」
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