愛と音の花束を
「椎名といいます。入団希望します。楽器はヴァイオリンで!」

確かにプログラムには【弦楽器団員募集中!】と掲載している。
演奏会の後に、一緒に音楽をやりたいと思ってもらえたということは、すごくうれしい。

「ありがとうございます。失礼ですが、楽器とオケのご経験は?」

「ヴァイオリン歴は2年、オケの経験はありません」

……おっと……。

2年か……。
しかもオケ経験ゼロ……。

私のテンションが下がったのが伝わったのだろう。

「楽譜はある程度読めます。仕事は水曜午後休みなので、練習にもちゃんと参加できます!」

椎名、と名乗った男性は焦ったように自己アピールを始めた。

うちのオケは水曜夜が練習日。
仕事の都合がつかなくて毎回誰かは欠席する人がいる中、それはありがたいけれど。

「このオケのファンで、毎回定演聴きに来てます。このオケに入りたくて、ヴァイオリン始めました!」

あ、アツイ。
こういうタイプ、苦手……。

早く切り上げたくて、

「じゃあ次の水曜日の練習にいらしてください」

と言うと、椎名氏はものすごく嬉しそうに笑って、

「はいっ!」

元気よく返事をした。




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