愛と音の花束を


次の土曜日。
世間はクリスマスシーズン。
花屋も稼ぎ時。
お客様が途切れたタイミングで、長谷川さんは外で寄せ植えを作り、父と母は遅いお昼休憩に入った。

私が店内で1人、ポインセチアの鉢植えのクリスマスラッピングをしていると。

「こんにちは」

店に入ってきたのは、樋口さん。

「いらっしゃいませ」

「母のところに持っていく花束、いつもの感じでお願い」

「かしこまりました。少しクリスマスっぽくしてみましょうか」

「ああ、いいね、それ」

樋口さんのお母様は市内の特養ホームにいる。
少しでも気持ちが和みますように、と願いをこめて、花を組み上げていく。

真紅のカーネーションとガーベラを中心に、緑と実モノを多めに。差し色で黄色のバラ。こっちにオレンジ〜ピンクのグラデーションのバラも足そう。それから、こっくりした紫色のアネモネ。うん。ぐっとクリスマスっぽくなってきた。

「ねぇ。永野。あたし、次の練習行けないから、今日が今年最後」

「はい。今年もお世話になりました。来年もよろしくお願いします」
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