愛と音の花束を
私が頭を下げると、樋口さんは優しく微笑んだ。

「うん。というわけで、セカンドトップ、一曲だったらあたしがやるよ」

……そう来たか。

「……コンマスからきいたんですか」

「うん。コンミスの打診断られたってショック受けてた」

「……それは……仕方ないです。私には荷が重すぎます」

「別にコンミスだからって1人で全てを背負わなくていいんだよ? みんなでサポートする。そこはみんな大人だからわかってるはずだよ」

「……考えさせてください」

「うん。でもあたしは永野ならできると思うし、永野にやってほしい」

心の中でため息をついた。
コンマスめ。私が樋口さんに頭が上がらないのを知ってて。



お会計を済ませ、出口まで見送る。

「永野には悩むなって言っても無駄だろうから、大いに悩んで覚悟決めな」

樋口さんはそう言って笑いながら帰っていった。

……もう、あのコンマス、ほんと計算高い。





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