愛と音の花束を


市民オケ、今年最後の練習が終わった。

どことなくみんなウキウキしている。
飲み会好きな金管は忘年会に行くらしい。
団結力が強いチェロもみんなでごはんを食べに行くらしい。

ヴァイオリンパートは人数の多さゆえ、何のイベントもない。

「永野さん」

楽器を片付けていると、帰り支度をした椎名がやってきた。

……いつになく神妙な顔付きだけど。

「何でしょう」

「相談したいことがあるので、この後お時間いただけませんか」

……いい話ではない予感。

パートリーダーの心得、『団員からのSOSには敏感になること。話をきくのは後回しにしないこと。』

「ロビー行きましょうか?」

まだ公民館の退出時刻まで少し時間がある。

「いえ、その、できれば、みんながいないところで……」

「別室行きますか?」

「いえ、あの、長い話になりそうなので、ゆっくり食事でもしながら、相談に乗っていただけないかな、と思うのですが、いかがでしょうか」




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