愛と音の花束を
「椎名さんは、なぜオケに入ろうと思ったんですか」

彼はパッと顔を輝かせた。

え。何その反応。

「んーとね」と言いながらコーヒーを飲み、口の中を空っぽにしてから、口を開いた。

–––––––「大勢で音楽やるのって、いいなぁって思ったから」

……うん。わかる。

「楽しいですか」

「弾けたら楽しいと思う」

「この先人生長いんですから、思うように弾けるようになって楽しいと思える方が長いですよ」

椎名は微笑みながら何度もうなづいた。
そして、あっという間に大きなハンバーガーを食べ終え、デニッシュパンの上にソフトクリームが乗った、この店の名物スイーツを食べ始めようとして、こちらを見た。

「一口食べる?」

「結構です」

「そう」

私はトーストサンドの二切れ目をもうすぐ食べ終わる。あと一切れ。

「あ、でもね、三神君とか結花ちゃんとか、ステージ上で遠い憧れでしかなかった人をそばで見られるっていうのはすごく楽しい」

…………はい?

「アマオケで弾きたいと思ってからいろんなアマオケ聴いたけど、うちのオケって弦のレベル高いと思った。練習見てみると、トップが上手いし、頭使ってるのわかる」

「それはコンマスがあのような人ですから」
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