愛と音の花束を
ふっと、人の気配がした。
顔を上げると。

「こんにちは」

コンマスだった。
慌てて立ち上がる。

「明けましておめでとうございます」

「おめでとうございます。今年もよろしくお願いします」

「こちらこそ」

「永野さんのお店に寄ったらいらっしゃらなかったのですが、まさかここでお会いできるとは思いませんでした。お墓までいらしていただいて、ありがとうございます」

「いえ……近くなので。お花、飾ります」

コンマスが持っていた花束を受け取る。
私が持ってきた花束も一度バラして、合わせて組み直そう。

コンマスが掃除する横で、彼と私が持ってきた花をバラして広げる。

お墓に供える花束は一対。
一つ目の花束を組んでいると、

「僕にもやらせてもらっていいですか?」

とコンマスが隣に来て、もう片方用に分けておいた花を手に取った。

「指を痛めたら大変ですから私がやります」

「一度プロが作っているお手本を見ながら作ってみたかったんです」

スルーされた。
まあいいか。

私の手元を見ながら花束を作るコンマス。
意外と不器用な手つきは、新鮮だ。
< 74 / 340 >

この作品をシェア

pagetop