愛と音の花束を
「永野さんはどんなことを考えながら花束を作るんですか?」

「……そうですね……、主役の花を決めて、全体のイメージを描いてから、他の花やグリーンを配置していきます。花は見る角度によって顔が変わりますから、どう見せるか考えたり、たまには花にどこを向きたいのかきいたりします。無理に作りこみすぎず、バランスをとって整えていく感じでしょうか」

「おお〜なるほど!」

そんなに感嘆されると恥ずかしい。


しばらくお互い黙って作業して、2つの花束が出来上がった。

コンマスは2つを比べて、首をひねる。

「ああ、ほら、僕が作るのは何だかダサい」

「同じ花ですよ。ご両親は喜ぶと思います」

「そうでしょうか」

「そうです。花束は、受け取る人に喜んでもらうのが一番ですから」

彼は静かに花束を花立てに入れた。
お線香をあげ、墓石にお水をかけ、手を合わせる。

私は、彼の綺麗な姿に、見惚れる。
辛いことをたくさん経験して、人生を達観している人。
苦労することがわかっていて、敢えてそれに挑戦しようとする人。
年下でも、尊敬せざるをえない。

彼は長いこと瞳を閉じて合掌してから、立ち上がり、私を見て、「少しお時間よろしいですか」と言った。
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