愛と音の花束を
「そうですか……。うまくいってるんですか?」

「会社の人で、最近、長年付き合っていた彼氏と別れたばかりで。まだ片想いなんですけど、どうしても振り向いてほしくて」

わあ。
恥ずかしそうにはにかむ彼を、かわいいと思った。

「それで、コンチェルト聴いてもらおうと?」

動機がかわいすぎる。
手段はとんでもないのに。

「僕の最大の武器はヴァイオリンなので」

……そうね。それはかなり強力な破壊力を持つ武器だ。

「でも、相手も音楽好きでないと効果は半減するのでは」

「彼女もヴァイオリンやってた人だから、そこは大丈夫なはずです」

ああ、それは効果倍増。

「じゃあ春の定演にも誘ってみたらいいじゃないですか。シェヘラザードですし。彼女は、コンマスがコンマスやってることご存知なんですか?」

「いや、知らないです」

「じゃあサプライズでちょうどいいんじゃないでしょうか。春までに誰かにとられないように注意しながら」

まさかコンマスとコイバナをすることになろうとは。
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