愛と音の花束を
「応援していただけますか?」

「それはもちろん」

彼はほっとしたように微笑んだ。

「じゃあ、コンチェルトでコンミスやっていただけますね」

やられた!
前言撤回。
全くかわいくない。

こう答えるしかないではないか。

「……やらせていただきます」

まあ、腹を決めていたとはいえ、こうでもしないとイエスと答えられなかったかもしれないけど。
彼はたぶんそこまで見抜いて、こんな手段に出たのだと思う。
重ね重ね、かわいくない。尊敬する気持ちとは別問題だ。

「ありがとうございます!」

彼はにっこり笑って頭を下げた。

その笑顔を見ながら、彼が想いを寄せている女性に同情する。

罠を張り巡らされ、惚れさせられた上で、ノーと言えない状況に追い込まれ、落とされるに違いない。






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