かたかご
そなたも、同行いたすがいい。葛野王にも会っていくがいい。」
帝は、機嫌がよさそうに御名部皇女に声をかけると再び十市皇女を見つめ「必ず一緒にするから待っていろ。」
そう言葉を残し部屋を後にした。
御名部皇女は、再び二人だけになると、十市皇女にのべた。
「十市様、帝に愛されているのですね。」
御名部皇女のその言葉に十市皇女は、小さく微笑み
「愛されてる…そうですね…。」
御名部皇女は、十市皇女の言葉に陰を感じていた『本当は、兄様、帝に愛されない?あのご様子は見かけだけ?』
御名部皇女は、言葉に出せない言葉を心の中でつぶやいた。
帝と藤原耳面刀自(ふじわらのみみもとじ)の間に皇子が最近生まれている。十市皇女は、立場を整えるため?
御名部皇女は、女としての立場を改めて考えさせられた。
『私は、愛されたい』
心の中でつぶやいた。

公務を終え、帝はいそいそとやってくると、約束どおり十市皇女と息子の葛野王と庭に苗を埋め始めた。同行した御名部皇女だが、三人の姿を黙って見つめていた。
『私の思いはきのせいのようね…とても仲の良い家族であられる』
御名部皇女は安堵とうらやましい気持ちが交差していた。
『高市皇子様…今どうして
< 10 / 23 >

この作品をシェア

pagetop