かたかご
「相手は…伯父上?」
御名部皇女は、やっとの思いで言葉をはいた。
「そうだ、御名部、みなと都をでて避難するように」
帝は、そういうと部屋を後にしょうとした。
御名部皇女は、自分の前を通り過ぎようとした。帝に
「伯父上は、貴方の妻の父上でないですか、なのにどうして…。」
帝は、足止め御名部皇女を見つめると、
「止められなかった、私では力不足だったのさ」さみしい笑顔をした。
御名部皇女は、帝が行くのを止めようと、

「帝…いいえ、兄上は十市様を愛してるのでは?ならなにか別の方法があるはず」
「…」
帝は、黙っていたが、
「愛してるよ。でも私の愛は、届くことはなかった。後悔はしていないよ」
「どういうことですか?」
御名部皇女は、帝がなにをいいたいかわからなかった。
帝は、御名部皇女に一輪の花を、黙ってさしだした。
「帝…」
「御名部、兄上でいい。そなただけだ。会いに来てくれたのは…」
御名部皇女は、黙って差し出す、花を受け取った「この花は?」
「かたかごだよ」
寂しく笑い、そういうと扉のむこうへさっていった。
「…兄上」
御名部皇女は床に座り込み花をにぎりしめた。

この後、壬申の乱が起こった。
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