かたかご
「ありがとう、御名部様」
十市皇女は、床から上半身起こしていた。
「どうぞ、横になっていて。」
御名部皇女は、少しやつれた十市皇女をきづかい横になるように、進めた。
「大丈夫です。葛野のことを、守らなければいけないのに…」
しっかりしないといけないのにといいたげな十市皇女を御名部皇女は、胸がいたんだ。
確かに、葛野王は敗者の子供であるが、現帝の孫でもある。
帝は、悪いようにはしない。
しかし、大友皇子の子供として、クーデターの首謀者として祭上げられるおそれ、敗者の一族としてのさげずみ、現帝の孫であるからの恩恵の妬み…
「まずは、お体を治してからですよ。」
御名部皇女は、ありきたりの言葉しかかけられない。
十市皇女は、御名部皇女のきづかいに
「そうね。
元気にならないとね」
そう静かに応えた。
「母上!」
元気よく走りながら、片手に包みをにぎりしめ、部屋に飛び込んできた。「葛野。御名部様にごあいさつを…」
葛野王は、母十市皇女にたしなめられると、
御名部皇女に向かって
「こんにちは」
とぺこりと頭をさげた。「おじゃましております。」
御名部皇女は、にこり微笑みかえした
< 15 / 23 >

この作品をシェア

pagetop