かたかご
「葛野、それは?」
葛野王が握っている、つつみについてたずねた。「もらったの
母上に渡してくださいっていわれました。」
葛野王は、母十市皇女に差しだした。
十市皇女は、受けとるとゆっくりと、つつみをひろげた。
中には、高価な煎じ薬と新鮮な果物がつつまれていた。
「まぁ!」
御名部皇女は、思わず声を上げてしまった。

「…」
十市皇女は、だまって見つめた。
「葛野、どなたに、いただいたの?」

「この前、きた。皇子様」
十市皇女の表情が、こわばった。
「…どこでいただきましたの?」
葛野王は、明るい声で
「庭で遊んでいたら外から声かけられたの。」
「それで?」
「母上に渡してくださいと言われて帰っていったよ。」
「…」
十市皇女の様子が、変だ。
御名部皇女はそうかんじた。
「時々、庭で遊んでいると僕に、声かけてお話ししてくれるんだ。」
「そう。」
「母上、お庭で遊んでくるね。」
葛野王は、走りだした。十市皇女は、ハッとして葛野王の腕をつかむと、「だめ、」
「?」
葛野王は、キョトンとした。
「お部屋でお勉強をしないと…。遊びはまた明日ね。」
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