かたかご
数日後、十市皇女は斎宮として、伊勢へ参ることが決まった
あまりにも突然の命に、
驚きと不穏な噂が飛び交うなか、日々は過ぎていく
当日の朝、
事件は起きた!!

「十市様!!」
采女が、部屋を訪れると、安らかに横たわる。十市皇女のからわらに、山吹の花がおいてあった。

十市皇女はすでに、あの世へ旅立ちをしていた。

采女たちは、山吹を何故か高市皇子へ届けた。

高市皇子は、山吹を見つめ泣き崩れた。

十市皇女からの遺言を意味していたそうだ。

実がならない、花
みのらない、あい
と…

その話を聞いた御名部皇女は、再び泣いた。
十市皇女のやさしく、さみしい顔が浮かんでいた。
(何故ですか?十市様があの世にいかなければいけなかったのですか?)
あの日、見た出来事が最後に姿を見たことになるなんて…

十市皇女の殯は静かにとりおこなわれ、何事もすべて終わると、十市皇女の死は誰も語らなくなった。

それぞれの心に穴をあけたまま
< 21 / 23 >

この作品をシェア

pagetop